回路設計者と基板設計者の意思疎通がうまくできてない場合、「こんな部品配置じゃ特性がでない」「こんな配線の仕方じゃノイズに弱くなってしまう」という理由でいろいろと手直しが必要になります。
そうならないように回路設計者から基板設計者へ適切な指示書が必要なのですが、完全には意図が伝わらない場合があります。
そんな時に「自分で基板設計もできたらいいのに」と思ったものでした。
今の時代、海外の基板製造メーカに依頼すれば格安でオリジナル基板が製造できるので、試作などの基板を自分で設計したり、趣味で電子回路工作を行っている人も個人で基板を製造できるので、非常に幅が広がります。
ここでは、無料で使えるオススメの基板設計CADを紹介したいと思います。
自分で基板設計を行うメリット
昔は基板設計と言えば専門業者に頼むのが一般的でしたが、現在はさまざまなPCB設計用CADが無料で使えるようになっています。
ですので、小規模の回路なら自分で基板設計までやった方が思い通りの基板ができますし、時間もコストも低減できるようになりました。
使い方を覚えるのに時間が必要ですが、習得できればかなりのメリットがあります。
基板設計屋さんの苦労や気持ちがわかるようになるので、基板設計を外注する際には、より的確な指示ができるようになります。
また、趣味や勉強を兼ねて自宅で基板を設計することもできます。
大変便利な世の中になったと思います。
無料で使えるオススメ基板設計CAD
無料で使えるCADは今では結構な種類がありますが、私のオススメCADを紹介します。
- 「KiCAD」
- 「DesignSpark PCB」
- 「CADLUS X」
- 「Eagle」
- 「PCBE」
KiCAD
KiCADは回路設計、PCBレイアウト、ガーバーファイル作成などの設計プロセスを全て行える統合環境です。
オープンソースのソフトウェアで、ボランティアと寄付によって開発支援されていましたが、2013年に「CERN(欧州原子核研究機構」がKiCadの開発にリソースを提供し始めた事により開発は大幅に加速し、一気に市販のEDAツールのレベルに近づきました。
細かい制約がなく、シンプルな操作性で初心者の方でも取り組み易いことからユーザ数もどんどん伸びています。
ネットでの情報提供も多いので使い方に困ることはないでしょう。
DesignSpark PCB
DesignSpark PCBは商用利用も無料で使える基板設計用CADです。
パワポやエクセルのように簡単に回路図や基板配線を設計できます。
求めるレベルに応じて、有償版と無償版がり、無償版であったとしてもフル機能を商用利用することができます。
CADLUS X
P板.comで提供されているCADです。
部品ライブラリも充実しており、使い方講習会なども行われているので、初めての方にとっては非常に安心で使いやすと思います。
このCADで作ったデータで基板を製造する場合には「P板.com」にしか発注できないのがデメリットです。でも、「P板.com」さんは基板製造に際して事前にデータのチェックを細かく行ってくれますし、納期も非常に早いので、初めて基板製造までを行う場合には一番オススメです。
Eagle
フリーで使えるCADとしては昔から多くの人に利用されているので、一番ユーザー数が多いかと思います。
その為、部品ライブラリも充実しています。
このCADで作成したデータはどこの製造会社でも使えるので、海外の安い業者へ依頼することができるのがメリットです。
難点としては、回路図を作成する時点で、使用する部品のフットプリントを設定しないといけないところが私は苦手でした。
回路図作成の時は、回路図に集中したい派です。
2020.06.06追記
フリー版では回路図シート 2 点、信号レイヤ 2 点、80 cm2(12.4 in2)の基板領域を利用できます。
PCBE
本当に手軽なフリーソフトです。
お絵かき感覚で使用できますが、逆に複雑な回路になると使いづらいです。
両面基板の簡単な回路であればこちらのCADも良いと思います。
私の場合、ユニバーサル基板で試作する際に、部品配置や配線の簡単なイメージを作る為に使用しています。
まさにお絵かきソフト感覚で使っています。
ちなみに昔、私の師匠である方が、このCADで複雑な設計を行い、それを見せていただいたことがあるのですが「このCADでここまでできるのか!」と感動したことがあります。
新しくチャレンジする「KiCAD」
今回私は新しく「KiCAD」というCADにチャレンジしたいと思います。
チャレンジする理由
- 完全にフリーで使える統合環境ツールであること(海外で安く基板を製造したい)
- Eagleと違い、回路図作成時にフットプリントの設計が必要ない
- 徐々に人気が出てきているので試してみたい
資金に余裕があれば、「CADLUS X」一本で十分なのですが、製品によって安く抑えたい場合にはどうしても「CADLUS X」以外のCADも必要となります。
Eagleの苦手な部分を改善?されているということで、新進気鋭の「KiCAD」に挑戦していきたいと思います。